胆のうと総胆管の結石(手術も傷跡が残らない方法が主流)---資料---
---暮らしと健康の月刊誌ケア2002.11月号掲載分より---
■以前とは石の種類が変わってきている
様々な病気で、その要因の一つに挙げられている食生活の欧米化。森合副院長によると、胆石にもこの影響が見られるという。
「胆石とは胆のうと胆管、肝臓にできる結石の総称で、胆のうにできる結石が胆石の中では最も多く見られます。胆石は昔から見られる病気ですが、二十から三十年前に比べると、その頻度は二倍くらい高くなっています。胆石を構成している成分は主にビリルビンやコレステロールなどで、これらの胆汁に含まれている物質によって結石が形成されます」(森合副院長)
ビリルビンとは赤血球のヘモグロビンから作られる色素で、赤血球が寿命前に何らかの原因によって破壊されると、様々な化学変化の結果、分解されて作りかえられて生成された色素で、最終的には肝臓から胆汁の成分となって排出される。
「昔はビリルビン結石が多く見られました。これは衛生状態が現在よりも悪く、胆道に何らかの細菌類が感染してできていました。しかし現在はコレステロール結石が多くなり、その要因の一つとして食生活の変化が大きく関わっていると考えられています。」
また森合副院長によると、最近ではこの二種類の胆石のほか、黒色石というビリルビンの代謝異常が原因と考えられている結石も増加しているという。
「現在はコレステロール結石が約70%、ビリルビン結石が約5%ですが、黒色石は約25%も見られるようになっています。これらの結石は砂のような細かい物から直径数センチになる物までサイズも、その個数も人それぞれです。」
結石の典型的な症状は強い痛み。胆石の場合も右上腹部に疝痛とよばれる強い痛みが生じる。「ほかにも個人差がありますが、油の多い食事の後に鈍い痛みを感じたり、感染を起こすと黄疸が見られたりすることもあります。また、このような痛みを全く感じない場合もあり、これを無症候性胆石といいます。自覚症状がない無症候性胆石はドックでの検診や、ほかの病気で検査をした際に偶然に見つかるという。
「胆石はエコーを使った検査で簡単に見つかります。無症候性胆石は一生症状を表さないこともあり、偶然に見つかっても発作を起こす確率は年に2%くらいと言われています。年に一回ほどの経過観察をするのみで、特に治療の必要はありません。」
しかし、もしも痛みを我慢して重症化すると急性化膿性胆のう炎となる。さらに胆のうの出口がつまり菌が付くと、そこに膿瘍や炎症を起こし、肝臓に広がると肝膿瘍となって全身障害を起こすこともあるという。
■腹腔鏡を用いた手術が胆のう結石治療の主流
「以前は胆石の治療となると開腹手術が必要で、患者さんの負担も大きいものでした。しかし今は腹腔鏡下胆のう摘出術が広く行われています。これは腹部に1センチくらいの穴を3〜4ヵ所開け、そこから腹腔鏡から映し出される映像をモニターで見ながら手術する方法です。」
森合副院長によると腹腔鏡を用いた手術時間は平均1時間半くらいで、事前の検査も含めた入院期間も1週間ほどで済むという。また手術後は傷跡も開腹手術のように目立たないというメリットもある。
「胆のう結石による痛みは結石によって胆のう炎を起こしている痛みで、炎症を起こすと胆のうはほとんど機能していません。また胆のうは摘出しても、その後の生活に影響の無い器官ですので、通院などの必要もありません。」
また場合によっては胆のうと総胆管の両方に結石ができることがあり、この場合には内視鏡も用いられる。
「胆石の八割は胆のうのみの結石ですが、残りの二割は胆管にも結石があり、この場合には総胆管の結石を取ってから胆のうを摘出します。総胆管の結石を取るにはEST(内視鏡的乳頭切開術)とEPBD(内視鏡的乳頭バルーン拡張術)という方法があります。」
ESTは胆管と膵管の十二指腸の出口にあたるファーター乳頭を、内視鏡から入れた電気メスで切開して器具を入れる方法で、大きな結石でも容易に取ることができる。EPBDはファーター乳頭に8ミリくらいのバルーンを入れて乳頭部を広げ、そこから器具を入れる方法。
「この二つの方法にはどちらも一長一短があり、現在は施術する医師の得意な方が選択されています。ESTは切開するので出血があり、EPBDは一時的に広げるだけなので、石が大きかったり数が多いときには向かないこともあります。また以前はEPBDによる急性膵炎が高率に発生していました。しかし現在バルーンをゆっくりと加圧する方法が用いられ、膵炎も少なくなりました。」
このほか、一部の施設では胆のうを先に摘出し、その離断したところから胆管の結石を取る方法を用いていることもあるという。
■中年以降の肥満気味の女性は要注意
「統計を見ると40歳代以上で太り気味の女性に、やや多く胆石が見られるという傾向があります。肥満はコレステロール結石のリスクとなり、これが近年、結石の成分の主流を占めるようになった要因です。」
また日本人の平均寿命が伸び、高齢化社会となっている現在、加齢も一つの要因となる胆石について、特に高齢者の治療の難しさを森合副院長は次のように話す。
「高齢者は様々な痛みに対して、感覚が弱くなっていることがあり、自覚症状を感じて医療機関に受診したときには、症状がかなり進行していることがあります。高齢になると様々な合併症を持っていることもあり、これが治療を難しくさせています。特に胆のうがんの合併について、若年層では1%くらいなのが、高齢者では4から10%に増加します。ですから手術をするときには体調などの条件の良い時を狙って手術を行っています。
始めにもお話ししたように、食生活も胆石に大きく関係していますが、これは胆石に限ったことではなく、多くの病気に当てはまります。食生活が要因となる全ての病気は日頃の積み重ねの結果として発症します。今一度日本食のすばらしさも再確認しておきましょう。
腹腔鏡を用いた手術で負担が大きく軽減された胆石。また無症候性のこともあり、本人も気づかないまま石の形成が進むこともある。運良く一生症状を出さないこともあるが、高齢で発症して治療を難しくさせないためにも、検診やドックで結石が見つかったときには定期的な経過観察を受けて、治療が必要になったらすぐに受診できるようにしておこう。
