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心臓血管外科のご案内

◆ 医師紹介
山下 暁立(医長) ・島根医大H16卒
・日本外科学会専門医
◆ 主な診療内容
● 心拍動下冠動脈 バイパス術
● 僧帽弁閉鎖不全症
● 大動脈弁置換術
※以下の内容は、札幌医科大学附属病院第二外科の了承の元に作成しています。

心拍動下冠動脈 バイパス術

 当科では、特に「高品質かつ低侵襲」を実現すべく、以下のような独自の心拍動下冠動脈バイパス術を行っています。

・ 完全心拍動下冠動脈バイパス術(全例;人工心肺装置が全く不要)
・ 10年単位の長期開存が見込める最良の内胸動脈を2本使用(ほぼ全例)
・ 足の静脈を使用せずに、動脈グラフトのみで完遂(ほぼ全例)
・ 大動脈に全く触れないで手術を完遂(ほぼ全例)

 1998年に樋上教授(札幌医科大学第二外科)が世界に先駆けて開発した内胸動脈採取法(超音波メスによる内胸動脈スケレトナイゼーション法)により、長期開存性に優れた左右の内胸動脈グラフトを中心とした全動脈グラフトによる心拍動下冠動脈バイパス術を安全かつ容易に行うことが可能となりました。
 この新しい概念と新しい手法に基づく心拍動下冠動脈バイパス術の成績は極めて安定しており、99%以上の救命率と良好な長期グラフト開存が実証され、5年以内の狭心症再発率は3%以下と従来法に比べて格段に良好な遠隔成績を獲得するに至っています。

「狭心症と言われたら?」
 狭心症の治療法には、薬物治療、カテーテル治療、冠動脈バイパス術の3つの治療法があります。
 カテーテル治療が困難あるいは長期の予後が悪いと予想される場合、内科の先生はバイパス手術の話をなさるでしょうが、その場合当院では、高品質な心拍動下冠動脈バイパス手術(OPCAB)が可能です。

 心臓は全身に血液を送るポンプですが、そのポンプを動かす動力源のパイプラインが冠動脈です。ここに狭窄や閉塞をきたし十分な酸素供給ができなくなった状態が狭心症です。放置すれば急性心筋梗塞で命を失うことになりかねません。

 カテーテル治療はその狭い悪い血管の治療を行うもので、現在でもその術後再狭窄は大きな問題となっております。
 冠動脈バイパス術(別の血管で狭窄の末梢へ新しい道を作る)は、冠動脈の狭窄部分の末梢側に別の血管をつないで別の血の流れをつくる、いわゆる道路でいうバイパス道路(渋滞を解消する高架道路)と同じ考えで行われる血行再建術のことをいいます。
 この方法は、血液の流れの悪い血管を良い血管へつなぐ治療で、その最大の利点は10、20年先までのquality of lifeを考えた長期予後の改善です。

【左】3本の動脈グラフトによる4枝バイパス 【右】Sequential bypass(2箇所の矢印の部分で吻合)
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僧帽弁閉鎖不全症

 当科では、僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流)に対する手術は、自己弁温存による僧帽弁形成術を原則としています。

 2004年に樋上教授が開発した術中逆流評価法(逆行性心筋保護による心拍動下僧帽弁逆流評価法)は、左心房を開いた状態で、僧帽弁を直視下に見ながら心臓を動かして逆流の残存を確かめる画期的な方法です。
 この評価法を用いることにより、僧帽弁形成の仕上がりをより完璧にすることができ、現にほとんどの例で残存逆流ゼロを実現するに至っています。

「1.僧帽弁閉鎖不全症とは?」
 僧帽弁は心臓内の左心房と左心室間に位置する弁で、左心房から左心室へ流入する血液が左心室から左心房へと逆流を起こさないようにする大切な役割を担っています。
 この弁は、左心室の腱索によって引っ張られ、左心室が収縮する時に閉鎖するようになっています。
 この腱索が切れたり、伸びたり、あるいは左心室へ落ち込んだりすることにより、うまくあわないようになり逆流を生ずるのが僧帽弁閉鎖不全症です。
 原因として、加齢による弁の退行性変化、虚血性心疾患による弁支持組織の病変、リウマチ性、感染性、先天性、外傷性などがあげられます。
 重症度分類は心臓エコー検査等による逆流量の測定によって、軽症、中等症、重症に分類されます。

「2.症状」
 僧帽弁閉鎖不全症が進行すると心不全症状を呈してきます。
 代表的な自覚症状として、労作時の息切れ、全身倦怠感、動悸(不整脈の出現)、むくみなどです。しかしながら慢性的な僧帽弁逆流症の場合、症状の進行が緩徐で高度逆流が存在しても自覚症状を訴えない場合もあります。そのため、心臓エコー検査等にて定期的な重症度チェックを行うことが大切です。

「3.僧帽弁閉鎖不全症の経過について」
 重症度と自覚症状が必ずしも一致しないのが僧帽弁閉鎖不全症ですが経過についての報告をいくつか御紹介します。
「Natural History of Asymptomatic Mitral Valve Prolapse in the Community」
Circulation 2002; 106; 1355-1361

 米国メイヨークリニックからの報告で、自覚症状のない僧帽弁閉鎖不全症の患者さん(対象は833人)がどのような自然予後をたどったかを報告しています。つまり手術を受けずに内科療法(薬の内服等)のみで経過された患者さんの生命予後を報告したものです。この報告では自覚症状のない患者さんでも中等度以上の逆流を認めた患者さんは一般の人より明らかに寿命が短いことを指摘しています(10年死亡率約45%)。

「Clinical Outcome of Mitral Regurgitation due to Flail Leaflet」
N Engl J Med 1996; 335; 1417-1423
 これも米国メイヨークリニックからの報告ですが、重症僧帽弁閉鎖不全症の患者さん(対象は229人)がどのような自然予後をたどったかを述べています。先の報告同様、手術を受けずに内科療法(薬の内服等)のみで経過された患者さんの生命予後を報告したものです。この報告では、重症僧帽弁閉鎖不全症の患者さんが内科的治療で経過をみた場合、一般の人より寿命が短くなることを指摘しています。さらに死に至らなくとも10年以内に心不全を起こす割合が63%、不整脈(心房細動)を起こす割合が30%、塞栓症(脳梗塞など)が12%と僧帽弁閉鎖不全症による合併症を高率に発症することも報告しています。この重症例の中でも重い自覚症状を有する患者さんでは更に予後は悪く5年あたりの死亡率は86%と非常に高い数字でした。

 これらの報告からもわかるとおり、たとえ僧帽弁閉鎖不全症による症状のない患者さんでも中等度以上の逆流を生じている場合の寿命は短くなります。そのため症状のいかんにかかわらず、中等度以上の逆流を認める患者さんには、生命予後を改善するために治療を行うことが望ましいとされています。

「4.治療法」
 治療法としては内科的療法と外科的療法に分けられます。
 急性の僧帽弁閉鎖不全症は急激に心不全が悪化する症例が多く、速やかな外科的治療への移行が大切となります。
 慢性の僧帽弁閉鎖不全症では、内服剤や点滴等による内科的治療がまずは試みられます。
 しかしながら、中等度以上の逆流を生じた場合、自覚症状を認めなくても生命予後が悪くなることに加え、僧帽弁形成術による外科治療の成績が安定してきたため外科的治療が第一選択となりつつあります。

「5.僧帽弁形成術について」
 手術法としては僧帽弁置換術と僧帽弁形成術の大きく2つに分けられます。

 僧帽弁置換術は昔から行われている一般的な治療法で、治療成績も安定していますが、機械弁を使用した場合、生涯、抗凝固療法(人工弁に血栓がつかないように血液を固まりずらくする治療)が必要で、脳梗塞や、出血など、服用する薬による合併症の危険を避けては通れません。

 僧帽弁形成術の利点としては、人工物の使用がほとんどないため長期間の抗凝固薬の使用が不要となることです。ただし、心房細動等の不整脈を合併している場合はこれにあてはまりません。
 また、自分の心臓の形態を維持できるため術後の心機能が良好に維持できることから予後の改善にもつながるとされています。そのため弁置換術より弁形成術の方が望ましいのです。
 当科では僧帽弁閉鎖不全症に対して弁形成術を第1選択として取り組んでいます。ただし、弁形成術は、もともと病気のあった自分の弁を切ったり縫ったりして治すわけですから、術者の力量によって、手術成績が左右されます。その原因としては実際に心臓を動かしてみないと弁の逆流がしっかり治っているのかどうかを判断することは困難だったからです。
 当科では、逆流の術中評価をより厳密にするために大動脈遮断中に心臓を動かし、逆流の残存がないことを確認する新しい方法であるBeating testを行っています。その方法で術直後の残存逆流を限りなくゼロに近づけるべく努力を行い、10-20年後まで逆流の起こらない手術を目指しています。
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大動脈弁置換術

 当科では、大動脈弁狭窄症に対する手術は、超音波破砕装置による弁輪の石灰除去を行うことにより、最適なより大きいサイズの人工弁選択が可能となっています。
 原則として70歳以上の患者さんには生体弁を、70歳未満の方には機械弁をお勧めしています。大動脈弁閉鎖不全症では、大動脈弁置換術の他に、現状では適応は限られていますが、大動脈基部再建と共に大動脈弁の形成術も行っています。

「1.はじめに」
 大動脈弁とは、心臓のポンプである左心室の出口にある弁です。血液は左室がポンプのごとく収縮し働くことで全身にいきわたるのですが、大動脈弁は送り出された血液が大動脈から左室へ逆流することを防ぐという重要な働きをしています。
 この弁がうまく開かないのが狭窄症、閉じないのが閉鎖不全症です。

 病気が進行すると、症状(労作時の息切れ、動悸、疲れやすい、さらにひどくなると胸痛、意識消失)を認めるようになり、最悪の場合、突然死にいたることもあります。
 薬を用いて内科的に治療を行うことは可能ですが、原因は弁の形や動きに問題があるため、病変が進行した場合に根本的な解決をするためには手術が必要となります。そして、その標準術式は大動脈弁置換術となっています。

(手術適応の詳細については日本循環器学会「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン」 を参照してください)

 大動脈弁置換術とは正常に機能しなくなった弁を摘出し、人工弁に置換し機能を代替させるというものです。弁機能を改善させることにより心臓の左室にかかる負担が軽減され、自覚症状や予後の改善といった大きな恩恵を得ることができます。従って高齢者や重症例にも積極的に手術を勧められています。

「2.人工弁について」
 人工弁は機械弁と生体弁に大きく2種類に分類することができます。
□ 機械弁

 チタンなどの金属により形成されているので耐久性が高く、生涯にわたり使用できます。
 しかしながら材質上、弁に血栓(血の塊)が付着しやすく、最悪の場合は弁の可動性が損なわれ再弁置換術となる可能性があります。
 したがって生涯にわたり毎日一回、ワーファリンという血を固まりにくくする薬を内服する必要があります。ワーファリンの内服をきちんと継続すれば半永久的に使用できるため、若年の患者様に適応が考慮されます。

□ 生体弁

 ウシ心膜もしくはブタ大動脈弁を加工したものが主に使用されています。
 弁に血の塊が付着しにくく、術後3ヶ月〜6ヶ月後にはワーファリンの内服が不要となります。
 しかし最大の問題点は弁の耐久性であり、一般的に機能が保たれるのは12〜15年とされています。そして、弁の機能異常が出現した場合は再手術が必要となります。
 耐久性の問題を考慮し、日本循環器学会「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン」では65歳以上の方に推奨されています。また、催奇形性があるワーファリンを内服する期間が一時期のみであるため、挙児希望の若年女性にも適応があります。

「3.手術方法」
 全身麻酔をかけ眠った状態で手術を開始します。
 胸を縦方向へ大きく切開した後、人工心肺という心臓と肺を代用する機械を用い全身へ血液を流しながら自分の心臓を一旦止めた状態にします。
 自己の大動脈弁を切除し、適切と判断されたサイズ・種類の人工弁を糸で固定します。一旦止めた心臓を再び動かして胸を閉じて手術終了です。
 手術での死亡率は1〜2%になります。

「4.術後経過」
 手術後は厳密な術後管理が行なわれます。
 同日から翌日には人工呼吸器をはずし、約1〜2日で一般病室へ移動し、食事・歩行も行なえるようになります。
 リハビリを行いながら、術後の心機能評価(心エコーなど)を行い、約2〜3週間で自宅退院が可能です。

「5.大動脈弁置換術を受けられた方の注意点」

1)ワーファリンの内服について
 生体弁の方は約3〜6ヶ月、機械弁の方は生涯にわたり、血を固まりにくくするワーファリンという薬を1日1回毎日内服する必要があります。
 また、月に1〜2回、必ず外来を受診していただき、採血にて薬の効果を評価する必要があります。鼻血が止まらなかったり、歯肉からの出血、打撲によるアザが出やすくなった時は、薬が過剰に効きすぎている状態のことがあり注意が必要です。
 納豆、青汁、クロレラなどビタミンKが多く含まれている食品はワーファリンの作用に拮抗してしまい、効果をなくしてしまうため食べることはできません。

2)発熱
 歯科治療、泌尿生殖器の検査などでは一過性に血中に細菌が混入することがまれにあり、その際人工弁に感染して高熱が出現する場合があります(これを人工弁心内膜炎といいます)。
 重篤な疾患であり、人工弁が破壊されたり、血液中で細菌が増殖してショック状態となり命を落とす可能性もあります。高い発熱が認められた時は注意が必要です。
 しかし、通常の風邪による発熱で人工弁感染が起こることはありません。

3)弁機能不全
 機械弁の構造劣化はほぼ認めませんが、血の塊が付着して機能しなくなる可能性があります。
 また、生体弁には寿命があり一般的に12〜15年で機能が損なわれてしまいます。
 労作時の息切れ、動悸、疲れやすさ、胸痛、意識消失などを認めるようになった場合は弁機能不全の可能性があり注意が必要です。

【左】は高度石灰化を伴う大動脈弁狭窄症 【右】は生体弁による人工弁置換術後

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